社会の変化とコンタクトセンターのあり方 ~レコーディングソリューションの視点から~

2021/08/19 
クラウドソリューション部 第二技術室

はじめに

COVID-19で社会が大きく変革を求められたことは、皆さんの実感するところだと思います。日本コールセンター協会(https://ccaj.or.jp/index.html )が同協会のメールマガジン読者を対象に実施したアンケート*1によると、『テレワークをしたことがありますか?』という問いに対し、「はい(したことがある)」と回答したのは、2019年7月は40%(n=182)、2020年6月は78%(n=170)、そして2021年5月は回答数が少ないものの84%(n=74)と増加しています。頻度など他の要素までは読み取れませんが、COVID-19がコンタクトセンターの働き方に大きな変化をもたらしたのは間違いないでしょう。

さて一方で、コンタクトセンターで利用されるシステムのほうの変化はどうでしょうか。弊社のお客様の対応状況をみると、

・オンプレミスのシステムでテレワークに対応
・在宅業務部分だけクラウドを活用
・センター全体をクラウドに変更

の大きく3つに分けられるかなといったところです。ただ、センター全体をクラウドに変更したお客様は多いとは言えないのが実情かと思います。

いずれにせよ、テレワークで自宅に配置される機材は業務クライアント+ソフトフォン(WebRTC)or スマートフォン+ヘッドセットで、会社環境とはVPNを使って接続し業務を行うという形が多いでしょうか(図はAVAYA製品の例です)。

 


■オペレータテレワーク時のシステム環境の例 (AVAYA製品を使用した例)

 

ところで、オペレータ対応の品質管理などカスタマーエクスペリエンスの向上に役立てるため、コンタクトセンターではお客様とオペレータの通話をレコーディングすることが一般的です。今回はテレワークを検討する上でのレコーディングシステムについてエンジニア視点のお話をしたいと思います。

 

 

*1一般社団法人 日本コールセンター協会「CCAJ News Vol.292  2021年7月号」(https://ccaj.or.jp/ccajnews/pdf/ccajnews292.pdf) P7「ちょっと知りたい !? コールセンター ワンポイントアンケート メルマガ読者のテレワーク・在宅勤務事情」より抜粋。

在宅対応とレコーディングソリューションについて

レコーディングソリューションをテレワークで活用するためには、大きく2つの観点があります。

・セキュリティ対策
・データの活用

端末が外部環境に置かれるため、テレワーク時のレコーディングにおいてセキュリティ対策は必須です。また、せっかくシステムを変更するならば、記録するデータの活用まで併せて検討したいところです。

■セキュリティ対策

1点目のセキュリティ対策についてです。通話録音・音声認識ソリューションの中で、ネットワーク(以下 NW)のポートミラーリング技術*2を使ってデータを記録するタイプは、在宅での利用にあたり注意が必要です。このタイプは通話中の音声データをNW経路上のどこかでコピーしてそれを記録します。一般的に、この方式は音声の通信を非暗号化状態でおこなう必要があります。

従来であれば、電話機や各端末は会社環境下にあることから、データが外部へ流出するリスクが低いと判断し、この方式を採用しているケースもあると思います。しかし、在宅の場合は少し話が変わります。先程の例のようなPC + ソフトフォン環境では、フリーウェアの解析ソフトを用いて通話データを端末側でも保存できてしまいます。これ自体は社内環境であろうと同じことが可能ですが、問題は端末があるリモートワーカーの自宅の回線やセキュリティがどうなっているかという点です。企業で採用しているセキュリティ対策が施せる家庭は中々珍しいのではないでしょうか。

この課題に対する対策は単純で、通信に暗号化を用いるだけです。ただ、電話側のシステム含め変更が必要になるので、変更箇所はかなり大規模になります。また、ミラーリングにしか対応していない通話録音システムはそれ自体を変更しなければなりません。それ以外の方法としては、シンクライアントで自宅環境にデータを保持できないようにするなどが考えられます。

しかし、オンプレミスのシステム変更はコストが掛かります。そこで、クラウドサービスが選択肢に入ります。通常、コンタクトセンター向けのクラウドサービスは、通信やデータに暗号化の処理が施されています。音質など他の懸念事項はあるものの、セキュリティ面では最初から一定の対策が取られていると言えます。敢えてクラウドサービスのセキュリティ課題を挙げるならば、設定・管理ミスへの対策です。インターネットで公開されているサービスを利用するため、アクセス権は慎重かつ正確に運用する必要があります。実際、今年に入って内閣サイバーセキュリティセンターから出た通達にも、あるクラウド製品の設定不備による情報漏洩に関するものがありました。また、サービス規約にもよりますが、システムのアップデートをユーザ側が止められないケースがほとんどなので、仕様変更や更新内容のチェック体制も重要になります。

 

*2 NWスイッチのあるポートのパケットを指定ポート(ミラーポート)にコピーする仕組み

■データの活用

2つ目はデータの活用についてです。記録したデータの有効活用の最初のステップとしては音声の文字化がお薦めです。近年、音声認識の需要が伸びており、既に利用されているケースも多いかもしれません。

オペレータの応対内容を確認する際、音声データでは通話時間と同じだけの時間が掛かります。これが文字の場合どうでしょうか。スピーチなどで人が話す文字数は1分間300文字程度と言われています。実際の会話では思考するための間やフィラーが含まれるため、1分間の会話の文字数は300字より減ると考えられます。また、実際300文字が文量にするとどれくらいかというと、この章の冒頭の『2つ目はデータの活用に・・・』からここまでが大体300文字です。実際に計測してみると体感できますが、文字での認識は早いと理解いただけると思います。

また、お薦めする理由には応対内容の確認以外にも様々な活用例が挙げられます。認識結果の要約、ワードスポットやチャットボットなど近年のトレンドソリューション利用に向けたステップとしても非常に有効と言えます。

音声認識システムにもオンプレミスとクラウドがあります。どちらも一長一短ありますが、オンプレミスの利点はエンジンのカスタマイズ(チューニング)性能が高いことでしょうか。また、音声認識を活用したアプリが一緒に提供される点も挙げられます。反面、カスタマイズに時間が掛かります。カスタマイズは認識精度を向上させるために行います。業界固有の言葉を正確に認識させたり、業務フローに特化させるなどの目的も達成できるかもしれません。どの製品でも20~50時間程度の教師データが必要になります。教師データとは音声データとそれを正確に文字起こししたものを指します。文字起こしにかかる時間はおよそ音声の3~6倍の時間程度と言われていますので、20時間分の教師データを用意するにしても大変な作業になります。

クラウドの音声認識サービスは、カスタマイズせずにある程度の認識精度がだせることが多いです(弊社調査)。また、無料トライアルを提供しているサービスもあり、使い勝手や精度を事前に確認できるのもありがたいです。

デメリットとしては開発が必要なケースが多いです。文字に変換する目的だけならAPIを実行して終わりですが、リアルタイムで通話をモニタしたい、座席表に結果表示したいなど、オンプレで提供される機能利用を考えている場合、開発を視野に入れる必要があります。また、チャットボットや分析に用いたい等々文字化の目的に応じて選択を変える必要があります。

最後に

三井情報では今回ご紹介したレコーディング製品をはじめ、クラウド・オンプレミスを問わず多数のコンタクトセンター製品を販売しています。また、今回のコラムでは触れませんでしたがコンタクトセンターの業務を支援するAIやBotの開発にも取り組んでいます。三井情報は、このような変革が求められる状況下においてコンタクトセンターで働く皆様を多様なソリューションの提供を通して支援していきます。

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